健康保険制度は、国民全員が等しく治療を受けることができる制度です。
その反面、保険適用の歯科治療においては「かめる」という最低限の機能を取り戻すことに主眼が置かれているため、使われる材料や治療方法は20年から40年ぐらい前のものに限定されています。
このため、「自分の歯と区別がつかないような治療をしたい!」「芸能人のような透きとおる歯にしたい!」という「美しさ」を追求するご要望には保険が適用されない全額自己負担での治療を受けていただくことになります。
では、全額自己負担の審美歯科治療と保険適用範囲内の治療ではどのような違いがあるのでしょうか。
患者様にとって一番わかりやすいのは、経年劣化(けいねんれっか)とよばれる治療経過後の見た目の変化だといえます。その違いは写真で確認いただくと一目瞭然です。
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手前3本がレジン 一番手前:5年経過後 2番目:3年経過後 3番目:装着直後 |
中央から左3本レジン 中央から右3本セラミック |
手前3本がセラミック 一番手前:5年経過後 2番目:3年経過後 3番目:装着直後 |
保険治療ではレジン(プラスチック)が用いられます。
それに対して保険適用外の審美歯科治療では、セミラック(陶器)やジルコニアセラミックといった材料が使用されます。
レジン(プラスチック)は性質上、食事をするたびに水分を吸収してしまうため、見た目が劣化していくことになります。
また、患者さんにとって分かりづらい部分で、是非とも歯科医師として主張しておきたいのは、審美歯科治療は見た目の美しさだけではなく、
①身体への優しさ
②虫歯再発リスクの低下
にもつながるという事実です。
保険適用範囲内で認められている、いわゆる「銀歯」は、見た目に違和感があるだけではなく、金属イオンが体内に流出することで身体に悪影響を及ぼすことが知られています。金属イオンが身体に及ぼす影響は人によって様々ですが、場合によっては金属アレルギーによる発疹(ほっしん)が起きることがあります。
また、金属イオンが歯ぐきに沈着することによって歯と歯ぐきの境目に黒い線ができてしまうブラックラインも金属イオンの弊害の一つであり、近年では身体への優しさにこだわったメタルフリー治療(金属を一切使わない治療)を全額自己負担であっても希望される方が非常に増えています。
【ブラックライン】
※表面は白色のかぶせ物ですが、内側に金属を使用している素材なので、
歯ぐきにブラックラインが生じてしまっています。
虫歯治療をした歯は人工のかぶせ物をしているため、
歯とかぶせ物の境目からむし歯が再発するリスクが非常に高い事実があります。
こうしたことを避けるために我々歯科医師としては、人工のかぶせ物のすき間をぴったりと埋めようとしますが、保険の材料ではこうしたことに限界があり、せっかく治療した歯も数年すると再治療になってしまうケースが圧倒的に多いといえます。
しかし、セラミック(陶器)などの保険適用外の材料を用いることにより、かぶせ物と歯の間をぴったり埋めることが可能となります。
結果、保険の材料と比べ虫歯再発リスクを最小限に抑えることが可能となるのです。
「金属」ではなく、「白い」つめもの・かぶせ物を用いて、天然の歯のように仕上げていくのが審美歯科治療です。
レジン (プラスチック)を使用する場合は保険適用、
セラミックス(陶器)を使用する場合は保険外治療になります。
保険適用の白い詰め物・かぶせ物であるレジン(プラスチック)は、銀歯などと比べ審美性は優れていますが、先ほども述べましたように、経年劣化が生じてしまうのが残念なところです。
審美歯科とは歯の美しさを追及していく治療ですので、ここでは経年劣化の生じないセラミック(陶器)を用いた保険外の治療法を紹介させていただきます。
患者様のご希望の色を選択でき、時間の経過による変色の心配がないことが特徴です。
また、金属アレルギーの心配もなく、虫歯の再発リスクを軽減する効果もあります。
-銀歯・変色してしまったレジン(プラスチック)の代わりとしてセラミックを用いる場合
-ホワイトニングでは白くできない部分を白くする場合
-矯正治療の代替措置として、セラミックを用い歯並びを整える場合
・「セラミックインレー」:詰め物としてセラミックを用います。
・「セラミッククラウン」:かぶせ物としてセラミックを用います。
・「ラミネートベニア」 :薄いセラミックのシェルを歯の表面につけます。
※付け爪のようなイメージです。
当院ではプロセラと呼ばれる、ノーベルバイオケア社が提供する
最先端のオールセラミックシステムを採用しています。
従来型のセラミックは金属に比べ、はるかに強度が落ちるため、
力のかかる奥歯や、かみ合わせの強い患者様には
オールセラミック冠による治療は難しいとされてきました。
しかし、このシステムにより作られたオールセラミック冠は
従来の3~5倍の強度を持つため、「破折する」ということはまずありません。
この治療はごく少量でありますが、歯を削る必要があります。健康な歯を削る場合もありますので、まずは担当医と十分な相談をしてからの治療を御願いしております。
ホワイトニングと審美歯科の違いは何でしょうか?
簡単に言ってしまいますと2つの点で違いがあります。
≪1つ目≫
「審美歯科治療」はごく少量でありますが、歯を削る必要があります。
「ホワイトニング」は薬剤などを用いて歯に化学変化を起こし白くしますので、歯を削る必要はありません。
≪2つ目≫
「審美歯科治療」はあなたの好みの色を再現することが可能で、時間が経過しても治療時の色を保ち続けることができます。
「ホワイトニング」では歯の質や治療回数などにより白さの度合いは個人個人異なってきます。また時間の経過とともに白さが失われていきます。
このように治療法で一長一短がありますので、どの治療法の方がいいかは一概には言えません。担当医と相談してからの選択をお勧めいたします。詳細はホワイトニングを参照下さい。
歯並びがガタガタです。長い期間のかかる矯正治療ではなく、審美歯科治療でも対応可能と聞いたのですが、本当でしょうか?
本当です。
矯正治療は審美歯科治療と異なり、基本的に歯を削ったり神経の処置をせず、歯を移動させて歯ならびを正常の位置に導いていく方法で、歯自体には一番負担のかからない治療法です。
しかし矯正もいいことばかりではありません。
期間が比較的長いこと、個人差はありますが若干の痛みをともなうこと、器具が見えて格好悪いことなど、主に精神面でのマイナスの要素があります。
そこで「歯の色と歯ならびを短期間に」という条件に合う方法として紹介するのが
「オールセラミックスクラウン法」です。
これは歯の全面にセラミックのクラウンをかぶせ、しっかり固定する方法で、どんな色や形も自由自在に表現することができます。審美的には現在もっとも進んでいる治療法のひとつといえるでしょう。もちろん歯と同等の強度ですから、機能的にも天然歯にひけをとりません。
患者様の顔の輸郭や雰囲気、肌の色、よく付ける口紅の色などをトータルに把握しておき、ご希望も含めて一番合った歯の形、色、歯列をつくります。これが審美歯科ならではの特徴です。
いずれにしても、医師に相談してみてください。歯の状態や治療回数、費用などを総合的に検討して納得のいく方法をとられるといいと思います。